『半島を出よ』

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村上龍の『半島を出よ』を読んだ。

 

ものすごく色々と調べて書いているなあと感心したが、それ以上の感心とか感動は無かった。北朝鮮の反乱軍とドロップアウトした少年たちとの戦い、それ以外の部分が、単に各分野の専門家からの受け売りにすぎず、各章の関連性が非常に薄いためだ。

 

いくら精力的に取材や調査をしても、とことん現実味を持たせてこのような国際事件を描ききるには、事象が複雑すぎて纏めきれないといったところ。

この本が上梓されてからわずか数年しか経たない、いま現在に読んでみても、ちょっと疑問に思うところが少なくなかった。ゆえに、リアリティを求めたがための取材記事が、逆に致命的に感じる。 

 

まあそれも仕方のない話しで、実際の史実というものですら、明らかになるには何十年という月日と、膨大な検証が必要なわけで、それに匹敵するほどのすごく現実的な物語を書くとしたら、いくら取材をしてみたところで、数年じゃとても追いつかないのは当たり前だ。

 

それでも少しでも現実味を持たせようとした取材努力はみえるが、物語としては、ページの2/3は不要で、正直、原稿料稼ぎとしか感じなかった。

 

これだったら、源流ともいうべき『愛と幻想のファシズム』のほうが、何倍も面白かった。

 

つまるところ、人間に未来の予測、いっとう現実的な予見は不可能ということだ。文学に於いてリアリティは過去にしか存在しないとさえ言えるのではないだろうか。

 

しかしそれにつけても、村上龍のアンチ農耕民族性の描写は危険だ。影響を受けやすい性格の人が読むと、なんだか、自分以外が愚鈍に見えて仕方なくなるような心境を呼び起こす。その点での作家としての力量は半端じゃない。

だから、電車とかで単行本を手に妙に目がぎらぎらしたやつがいたとしたら、その単行本はおそらく村上龍の小説だろうとおもって間違いない。

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