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松本清張 『黒革の手帖』

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「たしかに、渡す、とは云ったがね。土地を渡す、とは云わなかった。」

「じゃ、何を渡す、と云ったんですか?」

「引導さ。君の貪欲なガリガリ亡者根性に、引導を渡す、と云ったのさ。」

 

 

松本清張 『黒革の手帖』を読んだ。

 

面白かったので、二日で上下巻をいちどに読んだ。

 

『わるい奴ら』と同じように、自らの欲望で身を滅ぼす人間の話だが、その欲望のありさまの描写がきわめて良い。話しとして、それよりもはるかにスケールアップしている。

 

やるか、やられるか。そんなピカレスクでハードボイルドな匂いに満ちあふれている。欲望の渦の中で、ささいなほころびを見逃し、破滅へと至るのだが、小料理屋の給仕女を自分の欲望のために利用するあたりから怒濤の展開が始まって、興奮させられる。

 

ミステリーというよりも、権謀術数の種明かしではあるが、それが小説ゆえに戯画化され、程度の差はあったとしても、現実にこういうどろどろとした欲望は日々そこいらに渦巻いているのだろうなと思されるのだった。

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